■ ゲルマニアとは?

 
 

東京エフェクターは今年2018年の7月7日でオープン5周年を迎えました。
その5周年の記念としまして、日頃より大変お世話になっている3つのビルダーズ・ブランドが東京エフェクター/TOKYO EFFECTORとのコラボ製品としてこちらで取り上げております製品を作ってくださいました。

 

今年7月7日(土)には、その製品発表として当店に於いて、「GERMANIA(ゲルマニア)七夕祭」を行い、盛況のもとたくさんのご予約をいただきました。

 

 

ゲルマニウム・トランジスタを使用したその5周年記念3モデルを現在では「GERMANIA」と呼んでおります。
発売の経緯に関してはシンコーミュージック刊「The EFFECTOR BOOK Vol.41」に私のインタビューとして詳しくご説明させていただいており、そちらをお読みいただけたら幸いです。

 

こちらでは、ビルダーの皆さんそれぞれの思いを制作秘話という形で、インタビュー形式にて掲載させていただいているので、是非ご覧くださいます様お願いいたします。

 

東京エフェクター店長 池田龍治

 
 

■ 商品紹介

 

東京エフェクター5周年に際し、当店を語る上で無くてはならないエフェクターブランドに協賛いただいた”GERMANIA”。
ゲルマニウムトランジスタ縛り、という難しいテーマを設定させていただきましたが、クオリティは当然として、それぞれのブランドならではの観点、コンセプト、サウンドが色濃く反映された特別企画ならではのモデルが出揃いました。

 
 

 
 

■ ビルダーインタビュー

 

『THE EFFECTORBOOK VOL.41』のBUILDER’S VOICEにも掲載された本企画ですが、濃すぎる内容のため書面には掲載しきれなかった各ビルダーの”GERMANIA”への意気込みを、ほぼ生原稿に近い、ありのままの各ビルダーの声をお届けいたします。

 

Ovaltone “Fuzoval”

田中 祐輔、田中 遼平

 

 

Q1)最初に簡単な自己紹介をお願いします。

 

田中Bros:神奈川県藤沢市のハンドメイド工房、オーヴァルトーンです。兄の田中祐輔(開発・製作)と、弟の田中遼平(会社経営)の2人で運営しております。2011年に会社を立ち上げ、2015年以降は毎年NAMM SHOWに出展しています。

 

 

Q2)東京エフェクターは開業5周年を迎えました。そこはあなたにとってどのような場所ですか?

 

田中Bros:お店がオープンされた頃は、まだ自分たちのエフェクターを取扱っていただける場所も多くありませんでした。そうした時期に、東京エフェクターのようなエフェクター専門店に商品を置かせて頂けたのは、とても嬉しかったことを覚えています。

 

 

Q3)GER-MANIA(ゲルマニア)企画のオファーを受けた時の、率直な感想をお聞かせください。

 

田中Bros:ゲルマ……か……。

 

 

Q4)今回の企画は、「ゲルマニウム・トランジスター縛り」というのがルールとなっています。ご自身のキャリアにおけるゲルマニウム・トランジスターへのこだわりや愛着について語ってください。

 

田中Bros:ゲルマニウム・トランジスターを扱うのは、趣味でエフェクターを作っていた頃を含め、今回が初めてでした。とにかく扱いにくいという印象が先に来てしまっていたんですが……実際、食わず嫌いでしたね。

 

 

Q5)GER-MANIAで、ご自身が担当されたプロダクトのメイン・コンセプトを教えてください。

 

田中Bros:“Fuzz Face”を基本回路としながら、そこに新しいアプローチを試みたことです。

 

 

Q6)差し支え無ければ、GER-MANIAモデル内で使用したゲルマニウム・トランジスターの年代や型番を教えてください。また、それを使用する決め手になった要素は何だったのでしょうか?

 

田中Bros:使用したのは、“MP37B”というロシア製のトランジスターです。NPN型で探していて、ルックスがとにかく気に入りました。

 

 

Q7)製作過程において、基本構想のベースとなったサウンドや機材はありますか? もしあるなら、その中のどんなエッセンスに惹かれたのか、また、それをどのように自身のモデルに取り入れ、進化させていったのかを解説してください。

 

田中Bros:昔、自分が趣味で作ったフルトーン“’70 Fuzz”のクローンが持っていたサウンドがとても好きだったので、そのニュアンスを盛り込むつもりでした。ただ、“’70 Fuzz”のトランジスターはシリコンなので、今回はハイブリッド構造にして、ゲルマの熟した感じとシリコンの倍音感をナチュラルなダイナミクスの応答でまとめ、弾きやすいけれどしっかり“ファズ”しているものを目指すことにしたんです。

 

 

Q8)NOSパーツがほぼ必須となるゲルマ・モデルでは、ある程度製作台数が限定されると思います。あなたは今回のGER-MANIAにはどれくらいの数を卸そうと考えていますか?

 

田中Bros:とりあえず、初回確保した分からですと、30台~50台はいけるのではないかと考えています。

 

 

Q9)当該モデルの開発者として、あなた自身のお気に入りのノブ・セッティングや、相性が特に良いと思ったギターやアンプの話を聞かせてください。

 

田中Bros:個人的には、“FUZZ”を下げた時のダーティーなクランチでカッティングをするのがとても気持ち良いですね。“FUZZ”を上げ目にするなら、ストラトのギター側のボリュームを絞った音で低音弦をゴリゴリするのがオススメです。

 

 

Q10)ご自身の作品以外のGER-MANIA参加モデルの中で、興味を引かれた個体はありましたか?

 

田中Bros:“Germaster”は、本当に非の打ちどころのないトレブル・ブースターだと感じました。“Black Swan GERMA”の方はまだ弾いたことがありませんので、是非そのうち試奏させて頂きたいです。

 

Ovaltone “Fuzoval”

 

Loud & Proud “Black Swan GERMA”

齋藤 浩二

 

 

Q1)最初に簡単な自己紹介をお願いします。

 

齋藤:エフェクター・ビルダーの齋藤です。ラウド&プラウドという自身のブランドの代表でもあります。

 

 

Q2)東京エフェクターは開業5周年を迎えました。そこはあなたにとってどのような場所ですか?

 

齋藤:東京エフェクターさんでは、いろいろなお仕事で関わらせて頂いておりますが……「現場」、「修行の場」、時には「憩いの場」……といったところでしょうか。

 

 

Q3)GER-MANIA(ゲルマニア)企画のオファーを受けた時の、率直な感想をお聞かせください。

 

齋藤:今回は、やるしかないな……と……。

 

 

Q4)今回の企画は、「ゲルマニウム・トランジスター縛り」というのがルールとなっています。ご自身のキャリアにおけるゲルマニウム・トランジスターへのこだわりや愛着について語ってください。

 

齋藤:ゲルマニウム・トランジスターがまだ比較的手に入りやすかった時代に、有名無名に関わらず、かなりの数をチェックしたことがあります。歪ませた時の音や雰囲気において、ほぼ全ての品番で、シリコン・トランジスターでは感じたことのない“気配”と言いますか……可能性を感じたのを覚えています。この時感じた魅力的なサウンド・エッセンスに関しては、この先も私の意識から消えることは無いと思います。

 

 

Q5)GER-MANIAで、ご自身が担当されたプロダクトのメイン・コンセプトを教えてください。

 

齋藤:とにもかくにも、「ゲルマニウム・トランジスターらしさ」を出したいと思って作業をしていました。

 

 

Q6)差し支え無ければ、GER-MANIAモデル内で使用したゲルマニウム・トランジスターの年代や型番を教えてください。また、それを使用する決め手になった要素は何だったのでしょうか?

 

齋藤:具体的な型番に関しては控えさせて頂きますが、実は、今回使用したものは日本製のゲルマニウム・トランジスターなのです。以前、多くの数をチェックした際に印象的だったものの中のひとつで、歪んだ時に複雑で柔らかい倍音の変化をすることに特徴が有ると感じ、採用しました。

 

 

Q7)製作過程において、基本構想のベースとなったサウンドや機材はありますか? もしあるなら、その中のどんなエッセンスに惹かれたのか、また、それをどのように自身のモデルに取り入れ、進化させていったのかを解説してください。

 

齋藤:回路のベースになっているのは、東京エフェクターの“Black Swan”です。……が、今回の企画で参考にさせてもらったのは、ギターのヴォリュームを絞った時のマーシャル“Supa Fuzz”の音です。フィルターの効果も有るかもしれませんが、柔らかく絶妙なクリーン・サウンドで、ゲルマニウム・トランジスター独特のトーンをそこに感じました。トランジスターの構成、定数、クリッピングを変えながら、ただひたすら、その音色だけを目指してサウンド・メイクをしていました。

 

 

Q8)NOSパーツがほぼ必須となるゲルマ・モデルでは、ある程度製作台数が限定されると思います。あなたは今回のGER-MANIAにはどれくらいの数を卸そうと考えていますか?

 

齋藤:手元にあるゲルマニウム・トランジスターを選別して使っているのですが、今のところその中から10台分取れるかどうか、と言った状況です。

 

 

Q9)当該モデルの開発者として、あなた自身のお気に入りのノブ・セッティングや、相性が特に良いと思ったギターやアンプの話を聞かせてください。

 

齋藤:私の“Black Swan GERMA”の最大の特徴は、ギターのヴォリュームやピッキングの強弱で音量を変化させた際に、とても“やわらかい”倍音の変化をしてくれるところにあります。歪んでいるのか、歪んでいないか……その微妙なラインで、ギターそのものが出す美味しいトーンがしっかり増幅されて聞こえてくるはずです。カテゴリー的にはファズなので、ゲインを上げると、シングルではややダーティで複雑な歪みに、ハム・バッキングではバリッとしたテイストが強くなります。その一方で、本体のゲインを低めにセットし、ギターのヴォリュームを下げた状態から上げていった時の、このダイナミズムの変化はなかなかだと思いますよ。一度、皆さんに体験して頂きたいです。アンプとの相性は特に考えなくてもよいとは思いますが、スタジオ等、大音量で使用出来る環境の方が、よりこの機材の良さを感じて頂けるのではないかと思います。

 

 

Q10)ご自身の作品以外のGER-MANIA参加モデルの中で、興味を引かれた個体はありましたか?

 

齋藤:オーヴァルトーンさんの“Fuzoval”もサウンド・ウェーヴ・ラボさんの“Germaster”も、それぞれに凄いと感じるところがありました。どちらも、ブランドの特徴がよく出ていると言いますか……こだわりの中で完成度の高いモデルを作られたなぁ、と思います。

 

Loud & Proud “Black Swan GERMA”

 

Sound Wave Lab “Germaster”

遠藤“SHU”修

 

 

Q1)最初に簡単な自己紹介をお願いします。

 

遠藤:プロの釣り師というのは世を忍ぶ仮の姿、その正体は……何故か自分がいると試奏ブースから人が居なくなる事で有名なエフェクター・ビルダー(笑)。ブルースが好きで、本当はジョニーウインターがやりたかったにもかかわらず、ヘビメタ・バンドばかり渡り歩いていました。

 

 

Q2)東京エフェクターは開業5周年を迎えました。そこはあなたにとってどのような場所ですか?

 

遠藤:番頭の池田氏や社長の上平氏、そして、携わって来たビルダーさん達全員の「一緒に盛り上げていこう」って気持ちがひとつになって作り上げた場所だと思っています。正直、ウチは商売っ気のないメーカーですが、このお店というか、ここにいる人達と付き合っていると面白いんですよ。

 

 

Q3)GER-MANIA(ゲルマニア)企画のオファーを受けた時の、率直な感想をお聞かせください。

 

遠藤:今まで東京エフェクターを盛り立てて下さったお客さんに対してのお礼の気持ちが、まずひとつ。そして、一緒に企画に参加された他メーカー(オーヴァルトーン、ラウド&プラウド)の製品が、いちガレージ・メイド・エフェクターのファンとして楽しみだったというのもあります。

 

 

Q4)今回の企画は、「ゲルマニウム・トランジスター縛り」というのがルールとなっています。ご自身のキャリアにおけるゲルマニウム・トランジスターへのこだわりや愛着について語ってください。

 

遠藤:ゲルマニウム・トランジスターは、長い間個人的にも収集してきましたが、魅力でもあり頭痛の種でもあります。全てのゲルマニウムトランジスタが良い音になるかと言うと、そんなことはありません。生き物のように変化するサウンド・テイストをコントロールしようと色々試しましたが、正直、未だ明確な答えが出せずにいます。hfe値(増幅値)は毎回測るごとに違いますし、例えhfe値が一致したとしても同じサウンドになるとは限らない。生産国によってもテイストは変わりますし、何よりも、現存するゲルマニウム・トランジスターの入手自体が困難になりつつあるため、年々選定基準から外れるものが多くなっているのが現状なのです。そもそも、ゲルマニウム・トランジスターという存在そのものが宇宙開発等の過程で真空管に変わる増幅素子として生まれたもので、音響用に開発されたものではありません。……にもかかわらず、それを使うのは、真空管ともシリコン以降の素子ともまるで違う質感をサウンドにもたらすからです。ゲイン(音量と言う意味ではなく増幅回路が持つ性能)の低さから来る独特の飽和が、他の増幅因子に比べて実に温もりのある音像を生むこともその特徴と言えるでしょう。そこが、ゲルマニウム・トランジスターの魅力と考えます。

 

 

Q5)GER-MANIAで、ご自身が担当されたプロダクトのメイン・コンセプトを教えてください。

 

遠藤:「現代版ダラス(アービター)“Rangemaster”」というのがメイン・コンセプトです。アンプの持ち味を殺さず、それでいてゲルマニウム・ブースターとして特徴的なテイストを持たせることを主眼に置いています。また、ゲルマニウム・トランジスターを使って作られたディヴァイスを初めて手にした人でも、使いやすく、サウンド・メイクのイメージがしやすい仕様というものを意識しました。

 

 

Q6)差し支え無ければ、GER-MANIAモデル内で使用したゲルマニウム・トランジスターの年代や型番を教えてください。また、それを使用する決め手になった要素は何だったのでしょうか?

 

遠藤:今回は、一般的にPNP型より安定している印象の、NPN型ゲルマニウム・トランジスターを選びました。メーカーや品番に拘らずヒアリングを行い、いくつかの条件をクリアしたものの中から欧州製のものを採用しています。ロシア製、国産品番のモノは比較的新しく性能も良いのですが、ゲインが高過ぎたせいか満足のいく結果にはなりませんでした。どうやら、このディヴァイスの場合、ファズ等に使うものとはまた別の選定基準が必要なようですね。もちろん、欧州製だからと言ってどの品番でも良いと言うわけでもありません。奥が深いです。

 

 

Q7)製作過程において、基本構想のベースとなったサウンドや機材はありますか? もしあるなら、その中のどんなエッセンスに惹かれたのか、また、それをどのように自身のモデルに取り入れ、進化させていったのかを解説してください。

 

遠藤:それは勿論、モデル・ネームからもお分かり頂ける通り、ダラス社の“Rangemaster”です。過去に何台か触らせていただいた実機の中から印象に残ったサウンドをイメージ、ディフォルメしました。トレブル・ブースターと呼ばれるこの手のアタッチメントが生み出すサウンドというものは、多くの人がイメージするようなギャンギャン、ギラギラした耳に痛いサウンドとは全く異なります。実際のトレブル・ブースターは、増幅されたトレブル帯域に自然にコンプがかかることでむしろ聴覚上はそれほど目立って前に出なくなり、そこに中域を含めゲルマニウム・トランジスター由来の飽和特性が加わることで、より“ギターサウンドらしい”芳醇な響きを強調するものなのです。また、ロー域は不要にブーストされないので、低音弦側は歯切れが良くなり、フル・レンジにブーストした時よりもずっとアンサンブルで音が前に出るようになります。“Germaster”は、こうした“Rangemaster”的なトレブル・ブースター本来の魅力をしっかりと引き継いでいますが、“FILTER”を上げていくと必要に応じてローがプラスされるようにしたことで、より多彩なサウンド・メイクが可能となっています。

 

 

Q8)NOS パーツがほぼ必須となるゲルマ・モデルでは、ある程度製作台数が限定されると思います。あなたは今回のGER-MANIAにはどれくらいの数を卸そうと考えていますか?

 

遠藤:東京エフェクター5周年の記念モデルですので、20台限定で。今回のためにかき集めたNOSのゲルマニウム・トランジスターを、200本以上テストして製作しています。それより増やすとなると、この値段ではまず無理でしょうね。

 

 

Q9)当該モデルの開発者として、あなた自身のお気に入りのノブ・セッティングや、相性が特に良いと思ったギターやアンプの話を聞かせてください。

 

遠藤:ボードにある“Germaster”のノブ・セッティングは、“FILTER”が「3」、“BOOST”が「10」。アンプが自分のマーシャル“1987’72年製/JMP/50W)”の時は、ハム・バッキングで十分な歪みを得ることができました。一方、シングル・コイルPUのギターの場合は、ハイ側はコンプがかかってアタリが適度に柔らかくなってくれる反面、ロー域は歪みすぎるとアタック感がなくなってしまうので、どのくらいのゲインで使うのかが重要になります。アンプは、ヴィンテージに限らず真空管アンプでの使用を前提にしています。ハイ・ゲインな多チャンネル・アンプの場合は、ギター側のヴォリュームでクリーンからハーフ・クランチ程度の歪みにして使用すると、かなり幅広いゲイン・レンジをヴォリュームやタッチで使い分けることができると思います。

 

 

Q10)ご自身の作品以外のGER-MANIA参加モデルの中で、興味を引かれた個体はありましたか?

 

遠藤:全部ですよ。オーヴァルトーンさんの“Fuzoval”はハイブリッド・タイプなので、「自分ならこう作る」とか色々考えてしまいましたが……(笑)。こちらは、フィルターの設定にオーヴァルトーンさんらしさを感じました。ラウド&プラウドさんのBlack Swan”は今まででも十分なくらいオールド・ディストーションとして独特の魅力がありましたが、今回、ゲルマ・ヴァージョンになったことで、バーンズ“Buzzaround”みたいな複雑なミッド・ローを持つファズに生まれ変わりましたね。どちらもお買い得だと思います。

 

Sound Wave Lab “Germaster”